勿忘草にサヨナラを。



ガラガラッと派手な音を立てて扉が開く。

相変わらず担任の先生の扉の開け方はひどい。


いつも通りのホームルームが始まる。

みんなが少しソワソワしているのは転入生の話を聞いたからかな。


「はい、席につけー。転入生が来たから紹介するぞー」



みんなが一斉に騒ぎ出す。

小学生であろうと高校生であろうと転入生が来るというのはワクワクする。


かく言う私も実は少し期待混じりに心拍数をあげている。


「入ってこーい」



それは、一瞬時が止まったかのようだった。


みんなの視線がひとりの男子生徒に注がれる。



綺麗でかつ、自然な足運びに合わせて跳ねる髪の毛。


口元には今朝のような柔らかい笑みを浮かべている。



「……王子様?」


私は無意識に小さく呟いていた。


整った口元が言葉を紡ぐ。


「天野優斗です。よろしくお願いします」


優しくて柔らかい今朝と同じ声。


「じゃあ、仲良くやってくれよ。天野の席は、あの空いてるところだ。神木の隣の」


「はい」


無駄な動きいっさいなく私の隣の席まで歩いてくる。


すると、ふわっと良い香りが私を包む。


これは、知っている香り。

毎日、かいでいる香り。


「……勿忘草」