恥ずかしくなって逃げる。


「あ、おい。ちょっと待てよ」


光輝に追いかけられながら向かった教室の前に着く頃には追いつかれてしまった。



「んだよ、ちょっとからかっただけじゃん」


お互いに息が切れている。


ふたりの肩が上下する。


光輝が私の方を向くと顔と顔が近すぎて少しドキドキしてしまう。


……近い。


私はドアにもたれかかる。

上を見ると、私の頭の上を通ってドアに腕をつくのがみえる。

ドアと光輝に挟まれる。




「い、意味不明なこと言った光輝が悪いでしょ。あと……ちょっと近すぎ」



私が言葉を返す。


呼吸は整ったのに心臓がうるさいのはなんでだろう。




光輝のくりっとした目が、瞳が、私を捕らえる。



私の目が、瞳が、光輝を捕らえる。



少しの沈黙の後、先に口を開いたのはなぜか頰が赤く染まっている光輝だった。


「お前見過ぎ。それ誰にでもやってるだろ」



誰にでも……?


今朝の出来事を思い出す。

そういえば、王子様にも言われたっけ。


「確かに人をじぃっと見ちゃう癖あるかも」