「そんなに見られると照れるよ」
少し頬を紅潮させて王子様は恥ずかしそうに微笑む。
私、そんなに見ちゃってたかな。
私まで恥ずかしくなってきちゃった。
「あの、ごめんなさい。えっと、見惚れちゃってて……」
あれ、私今なんて言ったっけ。
変なこと言っちゃったよね。
行き場の無くなった視線を王子様にやる。王子様固まっちゃってるよ、どうしよう。
「ありがとう。でも……君の方が」
何かを言いかけてかぶりを振る。
なんだろう。
「時間取らせてごめん。もう時間がないよね?」
去年の誕生日に買ってもらったピンクと金色が基調の小ぶりな腕時計に目をやる。
「わっ、本当だ。ごめんなさい、私勿忘草好きなんです!」
去り際に思い出した、最初の質問に対する答えを言う。
私は走り出す。
もう、あの人に会うことは無いんだろうな。でも、素敵な人だったな。

