春風が私の前髪をはらりと撫でる。
それと同時に、あたりも草花も揺れる。
「あれ?」
その中の1つ。
青くて小さい可愛らしい花に目を奪われる。
でも、この辺じゃあ自然には咲かないはずなのに。
不思議に思ってしゃがんでじっくりと見る。
毎日見ているはずなのに、何故だか新鮮な気持ちになる。
「うん、良い香り」
ふわりと香る花の香りが鼻腔をくすぐる。
すると頭上から声が降ってきた。
「勿忘草、好きなの?」
声に驚いて勢いよく振り返る。
見上げると優しく微笑む男の人。
「ごめんね。驚かせちゃったよね」
声までも柔らかくて温かい。
「えっ、いえ!そんなことないです」
かっこいい。
おとぎ話に出てくる王子様って、きっとこんな人なんだろうな。

