* * *

「ーーそれでこっちに来て転入した学校のクラスで、偶然海華を見つけた。でも海華はオレのことを覚えてなかった。だから、忘れてるって言ったんだ。」

「...そう...なん...だ...。」

その話に私が関わっていることで、返事をどう返せばいいかわからなかった。

「けど、海華は気にすんなよ。もう過去のことだし、こんな話のせいで関係が壊れるなんていやなんだ。...だから、今まで通り仲良くしような。」

拓くんはそう言ってくれた。

本当に振っ切れてるのかな。

そんな心配はあるけど、拓くんとは今まで通り仲良くしたい。

「うん。仲良くしようね。」

少しは、少しじゃなくてもほんの少しは、解決した気がした。

拓くんの心のモヤモヤが、きっと晴れたと思った。

「あ、そーだ。オレが転入してきたとき言っただろ?拓って呼べって。」

「あー、そういえば。」

そうだったね。

でも、言えてなかった。

「...だから、その...ゆっくりでもいいから、呼べよ。拓って。」

拓くんの頬は少し赤く染まってたような、そんな気がした。

いや、"拓"の頬、が。

「うん、わかった!...拓。」

なんだか、心が太陽みたいにポカポカ温かかった。