「好きな人とか、いんの?」

急に聞かれて、私は驚きを隠せなかった。

「へっ!?えっ、な...なんで?」

顔がみるみる真っ赤になっていくのを感じる。

ちょっと、待って...。

自分でも自分が、よくわからない。

なんで私はこんなに、ドキドキしてるの...?

「...別に、ただ気になっただけだけど。」

拓は頬杖を付いて目を伏せる。

なんだか、ぶっきらぼうな表情というか。

「そっ、それは...。」

よく考えてみれば、私は誰が好きなんだろう。

前は凪のことが好きだったけど、でも今は違う。

だけど他に好きな人と言える好きな人がいるわけでもなくて。