人通りの少ない静かな廊下で、成瀬くんは立ち止まった。

前を向いたままだから、後ろ姿しか見えない。

だから、どんな顔をしてるのかな、って気になった。

「あの、成瀬くん。」

成瀬くんはこっちを振り向いた。

私の想像とは裏腹に、成瀬くんは優しげな笑顔だった。

「...その、今日呼んだのは。」

そこまで言って成瀬くんは、止まった。

そして、唇を噛んだ。

「告白の返事、聞きたかったからなんだ。」

やっぱりか。

予感はしてたんだ、告白の返事のことだろうって。

「うん。」

「急かしてごめんね。...返事は、決まった?」

私、朝から晩までずっと考えてたんだ。

成瀬くんになんて返事しようって。

確かに前は、成瀬くんのことが好きだった。

でも、今と昔って必ず変わるものじゃん。

「うん。」

私、もうしっかり決めたんだ。

今まで気付かなかったけど、成瀬くんに告白されたのがきっかけで、自分の本当の気持ちに気付いた。