ずっと悩んでいたら、何も始まらないのかも。
待っていたって、凪がいつ私の名前を呼んでくれるのか。
まだ少ししか経っていないからって考えすぎていたら、切りがない。
時間は過ぎて無駄になるし、悩みは続いたまま。
でもやっぱり大切な人だから。
そんな簡単に忘れられないよ...。
だけど、忘れられなくても...もう、凪のことは心の奥の引き出しにそっとしまっておくことにしよう。
今の私には、今のかけがえのない宝物がある。
今そばにいてくれる人、それを失くしたくないから。
「...拓。」
近くにいる人が、振り向いてくれる。
名前を呼んだらすぐ届くところにいてくれる。
「ん、何?“海華”。」
私の名前を、呼んでくれる。
「...ううん、なんでもない。」
近くにある宝物ほど、失って手の届かない遠くに行ってしまうときまで、気付かない。
まさに、“灯台もと暗し”だよね。
大切な人を失って、学んだこと。
だからもう、同じ失敗は、同じ後悔はしたくないの。
私、心のどこかで気付いちゃったんだ。
ーー拓のことが好き。

