「いいよ、俺は紀田の心の準備ができるまで待つから。」






優しくそう言われてその意味を理解すると、
想像してしまう。






一人で想像して赤くなっているところに藤沢はからかうような、少し怒ったような感じで私の顔をそちらに向けさせた。






「想像の俺で興奮してないで、今はこっち。」






少し顔が拗ねていた藤沢。
怒られそうだから表には絶対出さないが、かわいいと思ってしまう。





そんな余裕も次の瞬間には一瞬でなくなった。








「紅」






そう呼ばれたかと思ったら、藤沢の方に頭を強く引き付けられ、唇が重なった。







私の体温より少し低いそれは、目を覚ましたときのものと同じだった。






いつも落ち着いている藤沢が情熱的なキスを繰り返す。





次第に藤沢の唇は温度差を感じない程になってきていた。






変な気持ちになってきた、と思った途端にキスが止んだ。







よほど物欲しそうな顔をしていたのか、藤沢は少し笑う。







「これ以上は俺が無理。もう理性が効かなくなる。」








紀田の心の準備ができたら、と言って私をギュッと抱きしめると、寝室から出ていってしまった。







…………準備って、え?こんなに情熱的なキスされて、気持ちが高ぶってしまったのに?







藤沢よりも私のほうが重症そうだ。
変な気持ちにならないよう心を落ち着けてから寝室を出るのだった。