「おい、紀田。水飲め。」





背中に腕を入れられ、ゆっくりと起こされる感覚に目が開く。
目が開いて、自分が今まで眠っていたことに気付く。





「ここ……」




藤沢の家だ。
何度か来たことがある。





「ごめん、藤沢。また迷惑掛け、」





「お前、何か自分に言い聞かせてないか?」






謝ろうとしたところで藤沢が言葉を被せた。






そう聞いた藤沢の顔は何かを知っているようだった。
もしかしたらお酒によってベラベラといらないことを私は喋ってしまったのかもしれない。





「何かって…別に。」






藤沢がギロリと睨んだ。




「浩人との問題があった後………藤沢が、」




閉まったはずの気持ちを私は今引き出そうとしていた。




こんなことを言っても何も変わらない、いや、むしろ悪い方に向かうかもしれなかった。






それでも藤沢の目に操られるように私の口は動いた。






睨んでいたはずの藤沢がどこか優しい声をしていたような気がするからかもしれない。