それから顔や言葉にはでないものの、私を気遣って態度が優しい藤沢に恋を勘違いしたまま入社2年目に突入しようとした時だった。
「紀田はどうよ?いい身体してるし、美人だし。」
デスクに手帳を忘れてきたことに気付いて、
オフィスに戻ると先輩のそんな声がした。
紀田…?私?
なんの話をしているのだろう…?
何となく入ってはいけない気がして、足を止める。
「紀田は駄目ですよ。恋人になんて出来ませんよ。」
藤沢のその一言で、彼らは彼女は誰がいいかを話し、私は藤沢に却下されたのだとわかった。
嬉しいことではないが、あまりショックも受けなかった。
やっぱり藤沢には恋してなかったんだな。
そう思って、手帳を取りにオフィスに入り
先輩達には少し焦った目で見られたが、
私は何事もなかったかのように会釈して帰った。

