「おー、そろそろ資料の説明するぞー」 そんなどこか気の抜けた声を掛けるのは、 企画部の幹部のまとめ役、「お父さん」こと櫻井さんだ。 お父さん、とは言うが実は彼はまだ若く、 私より一個上の、先週27歳になったばかりで、そう呼ばれるのは年の割にあまりに面倒見が良過ぎるせいだった。 彼もまたかっこいい部類に入ると思う。 黒縁メガネが彼の知性を引き立たせている、と総務部の女の子が言っていたのを聞いたことがある。