それからは藤沢の機嫌は誰がどう見てもすこぶる悪かった。
話しかけたときの反応は別段いつもと変わりはないのだが、身に纏うオーラがどす黒いものだと誰もが思ったはずだ。
オーラが見えるものなのだと、驚いたのも私だけじゃないはず。
「お先に失礼します……」
いつもより少し小さくなった挨拶の声に、周りに残っていた人が私に哀れな目を向けながら、お疲れ様と返してくれる。
それに対して私は本当に「とほほ…」と笑いたい気分だ。
なぜなら後ろには未だどす黒いオーラを放つ藤沢が、私が「退社」するのを待ち構えているからだ。
この扉を出たら捕まえられることがわかりきっている。

