恋なんてするわけがないっ‼








それからは藤沢の機嫌は誰がどう見てもすこぶる悪かった。




話しかけたときの反応は別段いつもと変わりはないのだが、身に纏うオーラがどす黒いものだと誰もが思ったはずだ。



オーラが見えるものなのだと、驚いたのも私だけじゃないはず。






「お先に失礼します……」



いつもより少し小さくなった挨拶の声に、周りに残っていた人が私に哀れな目を向けながら、お疲れ様と返してくれる。



それに対して私は本当に「とほほ…」と笑いたい気分だ。



なぜなら後ろには未だどす黒いオーラを放つ藤沢が、私が「退社」するのを待ち構えているからだ。



この扉を出たら捕まえられることがわかりきっている。