しばらく無言のまま時間が過ぎた。
最初櫻井さんは、私が何か話し始めるかと私の方に目をやりながら煙草をふかしていたけれど、それでも話を始める様子がないのを感じ取って、それからは外の景色をぼんやりと眺めていた。
一本吸い終えた櫻井さんが私を見ずに言葉を発した。
「紀田は…どうしてここに来たんだ?」
その言葉がゆっくりと壁に吸い込まれていく。
聞いているはずなのに、何処か答えを求めていないような、そんなトーンだった。
「多分…、櫻井さんが思っている通りだと思います。」
私は先程まで櫻井さんの視線につられてぼんやりと見ていた外の景色から、櫻井さんの足元に自然と目線を落とした。

