お昼休みが終わる10分前。
私は小雪ちゃんと社員食堂から部署へと話しながら戻っている途中だった。





「あ。」





櫻井さんが階段を上がっていくのが見えた。
左手に煙草を持っていたから、多分最上階の喫煙ルームに行くのだろう。




なんとなく、追いかけなければいけないと思った。





「え、紅ちゃん。突然どうしたの?」




企画部のオフィスはすぐ右にあって、私も小雪ちゃんもそこに入ろうとしていたから、随分中途半端に途中で入るのをやめて階段のある方に体を向けたのは「突然どうしたの」以外のなにものでもない。




「…ちょっと。用事を思い出したの。」





不思議そうにこちらを見ているであろう小雪ちゃんの視線を背中に感じながら、私は足早に櫻井さんの後を追いかけた。