「……あいつさっきからうるさいな」
男の手がぴた、と止まる。
視線は俺に変わって鋭い目。
「そんなに吠えんでも返すわ」
「動かんし面白んないしなっ」
卑劣な言葉なのに俺にとっては安堵。
予想とは違うけど男はゆいさんの首もとを掴んで俺に向かって投げ飛ばす。
「…―いた、」
「ゆいさん…!!」
砂ぼこりを気にせず動かない体を必死に動かして駆け寄る。
暗くて見えなかったけど今はよく見える。
「…―血」
これはもう、普通女が負う傷じゃない。
頬は紫色になり頭からも血が流れてる。
口の中も切れているのかまた血が。
「おま、なんでとめるねん」
殴られてない場所を探すのも苦労するくらいなのに。
普通泣くのに。
「とめん、な」
なんでこの人は俺を睨むんや。
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