「こんなでかいグールは初めてお目にかかるぜ…何人食ったらこんなに育つんだ?」

ジルコーが言いながら、身を低くします。

敵に突進する前のモーション。

「お嬢ちゃん、手筈通りに行くぜ」

ググッと、バネが縮むような動きと共に。

「迷い出たならもう一度あの世に還りな!」

ジルコーはグールへと襲い掛かりました。

そのスピードは、私との戦いの時に見せたのとは段違いです。

私と戦った時は、私が女だという事もあって侮っていた部分もあるのでしょう。

でも、これがジルコーの本気…。

本気を出されていたら、私では敵わなかったかもしれません。

事実グールも、ジルコーの動きに全く反応できないまま。

「オラァッ!」

ジルコーの鋭い爪の一撃をまともに腹に受けます。

ドスッ。

肉と肉がぶつかり合う、鈍い音が墓地に響きました。

しかし。

「…野郎」

ジルコーが動きを止め、忌々しげに見上げます。

グールは微動だにせず、ジルコーを見下ろしていました。

彼の爪はグールの体表で止まっています。

貫けていないんです。