今日は日曜日。律が勤める永愛学園はキリスト教学校で、毎週月曜日の1時間目に礼拝がある。その礼拝での奏楽は音楽教師で音大のピアノ科を卒業、大学院まで出ている律の役目だった。
明日の奏楽を何にしようかと考えていると、律の携帯がメールの着信を告げた。
『こんばんは。お仕事おつかれさまです。明日の部活なのですが、歌はいっしょにの練習をしようと思ってます。先生は何時くらいに音楽室に来れそうですか?』
律は合唱部の顧問をしていた。メールは合唱部の部長の富田明からだった。メールが届いたのはすでに12時をまわっていたが、富田は律の帰りが、いつも仕事で遅くなることを知っていた。
『こんばんは。本当に疲れたよ。明日は生徒会があるし、行けるかどうかわからない。練習は富田に任せるからよろしく。』
かなり遅い夜ごはんを食べながら返信を送った。
富田が合唱部に入部してから、部の雰囲気はガラリと変わった。わずか5人だった部員の数は15人にまで増え、少し難しい曲にも挑戦できるようになった。律は、富田の気遣いができるところや、何にでも真面目に取り組むこと、どんなに自分が大変なときにでもそんなそぶりを見せまいと頑張るところを、純粋に評価していた。