「昭雄さん…カッターか包丁貸して下さい」

「お、おい、何するんだ國比呂っ?」

「誰か殺そうってんじゃないです…祥子さん祓わないと…祥子さん、僕見て怯えるなっていうのが無理な話かもしれないけど、怯えないで!佳奈美さん昭雄さんも怯えないで!とにかく怯えるな!怯えるな!!負けるか!負けるかよ!僕が居る!怯えるな!怯えるな!嘗めるな!僕だってやってやる!じいちゃんやってやるよ!見てろよクソ!クソォォォォォオォオ!」

國比呂は自分の怯えを吹き飛ばすかのように咆哮を上げていた。

祥子ちゃん半泣き…怯えきっていた。

俺も佳奈美も泣きそうだった。

ほんとにちびりそうだった…。

「分かった、分かった、頑張ってみる」

俺も祥子ちゃんも佳奈美も何やら分からないけど、分かった分かったって言ってた。

「昭雄さん包丁かカッター持ってきて下さい」

「お、おぅ…」

包丁を國比呂に手渡す。

「昭雄さん、僕の内腿、思い切り抓って下さい!思い切り!」

もう訳分からないけど、ここは唯一知識がある中学生の國比呂の言う通りにやるしかない。

「がぁあああああがあぐいうううあああ……!」

國比呂の内腿を抓り上げる俺。

俺に腿を抓り上げられながら、國比呂は自分の指先と掌を包丁で切りつけた。

多分、その痛みを消す為に抓らせたのだろう。

「祥子さん口開けて!」

國比呂は祥子ちゃんの口の中に、自分の血だらけの指を突っ込む!

「祥子さん飲んで、まずくても飲んで」

「あぐ…っぉあ…」

祥子ちゃんは大泣き。

言葉が出てなかった。

「…の天井、ノリオ、シンメイイワト、アケマシタ、カシコミカシコミモマモウス」

何やら祝詞か呪文か分からないが、5、6回ほど繰り返した。