…………………………










「……………」



お腹がすいた。

先ほど母が外出したので、下に降りて食べ物でもあさろうか。








…………………





あの電話で、俊太の母は泣きながら話してくれた。



『俊太がよくあなたの話をしていました。席替えはくじ引きで決めるのにいつも隣の席になるんだ、って。
嫌そうに言うのではなくて、とても嬉しそうに。

強がってるようでしたけど、きっとあなたが大好きだったのね。

部活でも、クラスでも一緒にいられて、本当に嬉しかったと思うわ。ありがとうね。』






………………







絵理は窓に向けたままの視線を無理矢理そらして、伸びをする。

立ち上がるのにも力がいる。



横に置いた携帯の電源をつけて、時刻を確認する。




まだ1時か…



あれから、時間がたつのが遅く感じる。
あいつの葬式の時間も無駄に長く感じた。


でもあの日、あいつが頭をぐしゃぐしゃにしてきた感触は、今でも残っていて…
その思い出を抱える時間が、異様に長く感じて仕方がなかった。





忘れてしまえば楽なのか、


いや
忘れてしまったら

私は今度こそ、何も残らない





胸の奥にあった気持ちを、気づけないままにしている。





あぁ また涙が出そうだ












コンコン











天井をぼんやりと見上げていると、突然のノック音が絵理の部屋に響く。



「……え…?」









コンコン








2度目のノック音



おかしい、
確かにさっき、母が玄関から出て行く音がしたはずだ。父も主張からまだ帰ってきていない。

今この家には自分以外誰も居ないはず…








コンコン










誰だ


誰がこの部屋の扉を叩いている。



「…だ…だれ…?」



ゆっくりと扉にちかづく。

恐怖はあったが、自然と体が吸い寄せられていく。



扉の目の前に立った瞬間、扉の向こうから声が聞こえた。



「…絵理」