「……え……?」
「…交通事故だそうだ、突然の事で先生達も混乱している。
榎本と仲の良かった奴も居るだろう。
…今日はもう帰りなさい。心の整理がつかんと思うからな。」
「……………。」
なんにもわからない。
理解出来ない。
死んだ?
俊太が…。
なんで?
俊太は、
俊太は
もうどこにも
居ないの?
佳奈が鈍い表情で絵理を見る。
到底、絵理にその視線は届かない。
うつむいて前が見えなかった。
顧問の2人は速やかにコートから去って行った。
絵理はそこから一歩も動かなかった。
動く事ができなかった。
「…え…絵理先輩…大丈夫ですか」
佳奈が肩に手を添えて心配してくる。
他にも絵理と俊太が仲の良かった事を知っている部員達が絵理のまわりに集まってくる。
「…あ………私…は……」
途切れ途切れの声。
実感がわかない筈なのに、怖い。手が震える。
「…っ……」
「あっ絵理先輩!!」
思わず駆け出す。
佳奈の声も届かないまま。
震える足を必死に動かした。
セミの音は
まだ絵理の耳には聞こえなかった。

