ガラッ!!!

部室のドアがいきなり開く。

「えっ…」

「恵一郎か…?」

誰だろうか…部員は残っていないはず。

「…」

返事をしてくれない。
恐怖で背中に冷や汗をかく。
背後には絶対に人がいるはずだ。

「あっあの…誰かいるっつ!?」

後ろからいきなり目隠しをされる。

えっ何!?怖い怖い怖い!
いきなり何なんだ!?
俺殺されるのか…?
ベッドの下の恵一郎から借りた
エロ本返してないのに…!?
まだキスもしてないのに…!?
こんな誰だか分からないやつに…。

恐怖と後悔で涙がでてくる。
情けない。
いつも、後輩に準備手伝えだの、
シーブリーズ貸せだの偉そうなこと
言ってるくせにこんな時は何も言えない。

そんなのカッコ悪過ぎるだろ!
せめて、反抗ぐらいしてやる!




「いやだ、やめろよ!」 

目隠しをとろうと必死にもがく。
両手で布を掴もうとした瞬間。

さらりと両手を縛り上げられる。

「っイタッ!」

ギリギリとロープで手首を
締め付けられてしまう。

もう無理だ。
きっと殺される。

ドサッ

地面に這いつくばる形で倒される。
そいつの手が延びてくる。

シャキン、シャキン。

ハサミの音!?
これはマジでヤバい!

「ふっぐっ…や、やだ、やめて…」

もう既に恐怖で声が震えている。

ジャキン、
着ていたTシャツを腹から切られる。
そのまま首したまで裁ちきっていく。
動いたら、刺さりそうで動けない。

ヒヤリとした外気に肌が晒される。

次こそ刺される。
そう思った矢先。

「っつめた!」

腹の上を指先で撫でていく。
気持ち悪い。
何をするつもりなんだ!?



「あっ…やめろ…ひっあ」

さっきから腹の横だとか、胸元だとか
おかしなとこばかりを撫でてくる。
もしかして、こいつはただの変態か…?
とにかくもう触られたくない。

早くこんなこと終わらせて欲しい。

そのうち顔が近づいてきた。
息がかかって気持ち悪い。
唇に変な感触がする。
まさか…!?
嘘だろ!?

咥内に舌が割り込んできて息が出来ない。
最悪だ。
こんなやつに俺のファーストキス
を奪われるなんて。
薄れ行く意識のなか、そいつは部室から
出ていこうとした。ドアを開けた瞬間、

「えっ誰だ!?」

聞きなれた声がする。

「待て!!とまれ!」

走って行く音がする。
待て、いかないでくれ。

「松坂くん、大丈夫!?何された?
どこか痛いところないか?」

優しい声が聞こえる。
恵一郎かな…?

ふと目を開けるとそこには恵一郎がいた。
小さな寝息をたてている。
恵一郎の膝の上で寝ていたようだ。

良かった…助かった。

「あっ起きた…」

「あっごめん。助けてくれてありがとな」

「いや、俺何もしてないし…それより
何があったんだ?あの、部室から出てきた奴は…?」

「それは…」




その日に起こったことを恵一郎の胸の中で
泣きながら話した。それはつらかったなぁ
とか言いながら、恵一郎は
一晩中、話を聞いてくれた。
俺はもう恵一郎から離れられない。