えっ?

私は驚いて、隣の玉置常務に視線を向けた。

間違いなく彼だった。

黒のポロシャツにブラックジーンズ、足元はスニーカーと言う私服姿の玉置常務が私の隣にいた。

会社ではスーツ姿でしか見たことがなかったから、一瞬誰だかわからなかった。

「――玉置常務…」

私は呟くように、彼の名前を呼んだ。

「えっと…会社は、どうしたんですか?」

この時間はまだ会社で仕事をしている時間だ。

なのにどうして私の目の前に、それも私服姿の玉置常務がいるのだろうか?

「有給を申請して休みにしてもらったんです」

私の質問に玉置常務が答えた。

何だ、そう言うことか。

てっきり会社をすっぽかして…なんて、仮にも常務と言う役職についている人がそんなことをする訳ないか。