――近いうちに、あなたにチャンスが訪れます

いつか言われた易者の言葉が頭の中に浮かんだ。

チャンスは近いうちにくるって言うけれど、それはいつのことなの?

今日なのか、明日なのか。

はたまた来年か、再来年か、それとも10年後か。

もしかしたら…その言葉は、易者が私を励ますつもりで言ったことなのかも知れない。

男運にも恵まれたこともなければ家族運にも恵まれたことがない私を励ますために、易者はそう言ったのかも知れない。

だから、近いうちに私に訪れると言うチャンスはこないのかも知れない。

「――矢萩さん?」

聞き覚えのあるその声に気づいたら、ショーウィンドウに映っている私の隣に玉置常務がいることに気づいた。