じれったい

優しい人だと、私は思った。

玉置常務が優しいから、私は勘違いをしてしまいそうだ。

その優しい性格は、私を女性として思っているからなのですか…と。

もちろん、違うと言うことはわかっている。

私のことは女性ではなく、秘書として心配しているだけ。

秘書の身に何かあったら自分の管理をしてくれる人がいなくなってしまうから、彼は私の心配をしているだけ。

「矢萩さん?」

玉置常務に名前を呼ばれ、ハッと我に返った。

「ああ、すみません。

降りますので、少々お待ちください」

そう言った車から降りようとしたら、
「待って」

玉置常務に呼び止められた。

「えっ、あの…」

戸惑っている私に、玉置常務の手がこちらに伸びてきた。