じれったい

「――さん、矢萩さん!」

その声に、私はハッと我に返って目を開けた。

心配そうに私の顔を覗き込んでいる玉置常務と目があった。

「――玉置、常務…?」

車がいつの間にか止まっているところを見ると、到着したようだ。

「矢萩さん、大丈夫ですか?

何だかうなされていたみたいですけど」

言いにくそうに言った玉置常務に、私は先ほどの出来事が全て夢であることに気づいた。

「はい、大丈夫です。

あの…怖い夢を見ていただけなので」

私は答えた。

「そうですか、夢でしたか」

ホッとしたように言った玉置常務に、
「すみません、心配をおかけして」

私は謝った。

「とんでもないです、矢萩さんが元気ならそれでいいです」

玉置常務は首を横に振った。