じれったい

「矢萩さんはしっかり者ですね。

先を見てよく行動しています」

移り変わる景色を見ながら玉置常務が話しかけてきた。

「そうでしょうか?

それは、ありがとうございます」

私は会釈をするように頭を下げた。

「矢萩さんが秘書で助かります。

これからずっと僕の秘書を務めてもらいたいです」

玉置常務は微笑んだ。

「はあ…」

私を褒めても何も出てきませんよ、玉置常務。

口で言う代わりに、心の中で呟いた。

悪い気はしないと言う訳ではないけれど、玉置常務は私のことを褒め過ぎだと思った。

車内に沈黙が流れた。

その代わりと言うように、睡魔が私に襲ってきた。

車の程よい揺れがさらに眠気を誘ってきた。

隣に玉置常務がいるのに…。

そう思いながら、私は眠気をこらえた。