じれったい

自分の過去と向きあっている玉置常務に私ができることと言えば、こうして彼のそばに寄り添うことだと思った。

「――俺は…」

かすれた声が私たちの耳に入ってきた。

「何か言いましたか?」

そう聞いてきた玉置常務に、私は首を横に振って答えた。

「――俺は…お前がそんな風に俺のことを思っていたなんて、知らなかった…」

そう言った声に視線を向けると、
「――兄さん…?」

眠っていたはずの玉置常務のお兄さんだった。

彼はうっすらと目を開けて、私たちを見つめていた。

「――和歳…お前が俺のことをうらやましいと思っていたように、俺は…お前のことをうらやましいと思っていた…」

かすれた声でそう言った玉置常務のお兄さんに、
「どう言うことなんですか?」

玉置常務は質問をした。