じれったい

玉置常務はベッドに歩み寄ると、
「兄さん、僕です。

和歳です」
と、お兄さんに呼びかけた。

ふとんから出ているお兄さんの手を、玉置常務はそっと握った。

「よかった…」

玉置常務は呟いた。

お兄さんが生きていたことに、安心をしたみたいだ。

「兄さん、ごめんなさい…。

僕が…僕がいなくなればいいなんて言ったから…」

そう言った玉置常務の声は、震えていた。

「僕は…僕は、あなたがうらやましかった…。

お母さんに愛されているあなたがうらやましかった…。

いろいろなものを与えられて、母から大切にされているあなたがうらやましかった…」

玉置常務はグスグスと、子供のように泣き出した。

私は彼の隣に歩み寄ると、そっと肩に手を置いた。