じれったい

その翌日、私たちは一緒に会社を休んだ。

レンタカーを借りて向かう先は、玉置常務のお兄さんが搬送された病院である。

「運転できるんですね」

助手席から声をかけた私に、
「これでも免許を持っていますから」

運転をしながら玉置常務が言った。

玉置常務が車を運転しているなんて何だか変な感じがした。

「矢萩さんは車の免許を持っていないんですか?」

そう聞いてきた玉置常務に、
「持っていると言えばいるんですけれども、最後に運転をしたのは…もう思い出せないですね」

私は答えた。

「大丈夫ですよ。

運転はさせませんから」

玉置常務は苦笑いしながら言った。

「何かすみません…」

呟くように、私は謝った。