カチカチと、時計の針の音が聞こえていた。

今が何時なのかはわからないけれど、時間は過ぎていると言うことだけはわかった。

玉置常務は私の腕の中で、グスグスと子供のように泣いていた。

彼が泣きながら懺悔をするように話してくれた過去は、抱きしめている私まで涙が出そうになった。

「――うらやましかった…。

兄さんになりたかった…」

玉置常務は泣きながら、何度も何度も同じ言葉を呟いていた。

私はそんな彼の背中をさすった。

テレビの画面に視線を向けると、ニュースから情報番組へと番組が変わっていた。

たまに速報で、今朝の高速バスの転落事故の新しい情報が入ってくる。

それまで泣いていた玉置常務が、ようやく落ち着きを取り戻した。

「――思い出と言うものはさ、乾けばすぐに燃えてしまうものなんだよ」

落ち着きを取り戻した彼に、私は言った。