じれったい

「そう…じゃあ、あたしから」

美知留はそう言った後、少しだけ目を伏せた。

「実はね」

何故だかよくわからないけれど、美知留の頬がポッと薄紅色に染まった。

「和歳に黙ってて申し訳ないなって思っていたんだけど…実はあたし、最近つきあい始めた人がいるの」

美知留が言った。

「――えっ…?」

言われた僕は訳がわからなかった。

僕の聞き間違いじゃなかったら、彼女の口から“つきあい始めた人がいる”と言ったはずだ。

「へ、へえ…」

この辺りで話を終わらせればよかった。

だけど、
「どんな人なの?」

僕は美知留に聞いてしまっていた。

美知留は恥ずかしそうに頬を赤らめたかと思ったら、
「玉置雅志くんって言う人なの」

僕がよく知っている名前を言った。