じれったい

合格発表が出た3月終わりの夜のことだった。

「合格おめでとう!」

いつものように映画館に顔を出して、第一志望の高校の合格を告げた僕に美知留は自分のことのように祝福をしてくれた。

「ありがとう、美知留」

美知留と出会って2年目と言うこともあってか、僕の口からは敬語が抜けていた。

「これで和歳も高校生だね!

あたし、すごく嬉しいよ!」

無邪気に笑っている美知留に喜びは一層増した。

彼女に気持ちを伝えるなら、今だ。

「――あのさ、美知留」

「和歳」

僕と美知留の声が重なった。

「和歳から話してよ」

美知留は僕に順番を譲ったけど。
「僕は後でいいよ。

美知留こそ、何か話があるんだろう?」

僕は美知留に先を譲った。