じれったい

名前で呼ばれたことが恥ずかしくて、
「じゃあ、それでいいです…」

僕は美知留から目をそらすようにうつむくと、呟くように答えた。

美知留の顔を見ることができない。

僕がどんな顔をしているのかもよくわからなかった。

「和歳」

「は、はい」

美知留に名前を呼ばれたので顔をあげたら、
「呼んでみただけ」

彼女はエヘヘと舌を出していた。

「呼んだだけって…」

思わず苦笑いをした僕に、
「和歳も呼んでくれたら許すよ」

美知留が言った。

別に許すとかどうとかの問題じゃないのに…。

そう思いながら、
「美知留」

僕は彼女を呼んだ。

この時、僕はすでに美知留に恋をしていた。