じれったい

じゃあ、何と呼べばいいのだろうか?

最初に思いついたのは、
「美知留さん?」

これだった。

「うーん、ちょっと違うかな」

美知留は苦笑いをした。

「…美知留?」

呼び捨てで呼んだ僕に、
「うん、それ!」

美知留は嬉しそうに返事をした。

「いや、でも…」

年上を、それも名前で呼び捨てにするのはいかがなものだろうか?

ためらっている僕に、
「あたしも“和歳”って名前で呼ぶから、ね?」

美知留に交換条件を出されてしまった。

異性の人間に名前を呼び捨てにされるのは彼女が初めてだった。

身近な存在であるはずの母親から名前で呼ばれたことは1度もなかった。