じれったい

「“思い出と言うものはさ、乾けばすぐに燃えてしまうものなんだよ”」

僕と美知留は声をそろえて、劇中のセリフを言った。

言い終えた瞬間、僕たちは顔を見あわせて笑いあった。

「一緒だったね」

笑いながら言った美知留に、
「一緒でしたね」

僕は笑いながら言い返した。

「あのさ」

美知留は笑うのをやめると、そう話を切り出した。

「はい」

何か失礼なことをしてしまっただろうか?

そう思っていたら、
「敬語を使うのをやめてくれない?

あたし、そう言うの苦手だから」

美知留が言いにくそうに言った。

「でも、菊田さんは年上ですし…」

そう言い返したら、
「その“菊田さん”って言うのもやめて欲しいんだよね…」

美知留は呟くように答えた。