翌日、僕は祖父と一緒に彼が働いている映画館へ行った。

祖父の膝のうえに座って、初めて見た映画は『さよならの君へ』だった。

テレビよりも大きなスクリーンで見たそれは、とても衝撃的だったのを今でも覚えている。

その時から僕は映画が好きになった。

学校の帰りに祖父が働いている映画館に顔を出した。

授業で出された宿題を片付けたら、上映中の映画を見て、仕事が終わった祖父と一緒に家へ帰ると言うのが当たり前になった。

映画を見ている間は何もかもを忘れることができた。

「僕もおじいちゃんみたいな仕事がしたい」

そう言った僕に、
「和歳もすっかり映画好きになったな。

おじいちゃんは嬉しいぞ」

祖父は笑いながら、僕の頭をなでたのだった。