「そんな訳ないだろ」

祖父が言った。

「お前は間違いなく、お父さんとお母さんの子供だ。

橋の下で拾われた訳があるか」

祖父はポンポンと、僕の頭を優しくなでた。

「うん…」

僕は首を縦に振ってうなずいた。

「そうだ、明日はじいちゃんのところに行くか?

おもしろい映画が公開されるんだ」

祖父は思いついたと言うように言った。

「映画?」

そう聞き返した僕に、
「ああ、おもしろいぞ」

祖父はニッと歯を見せて笑った。

映画を見に行くのは生まれて初めてのことだった。

「行く!」

僕は首を縦に振ってうなずいた。

初めての映画に、まだ幼かった僕はワクワクしていた。