殴られた頬を手で押さえながら、お兄さんが玉置常務を見あげた。

玉置常務に殴られた時に切れたのか、彼の唇の端から血が出ていた。

「あんたなんか…あんたなんかいなければよかったんだよ!」

倒れているお兄さんに向かって、玉置常務が怒鳴った。

「――た…ッ!?」

目の前で吐かれた暴言に、私はお兄さんの顔に視線を向けた。

お兄さんは信じられないと言う顔で、目の前の玉置常務を見つめていた。

「あんたなんかいなければよかったんだ!」

玉置常務がお兄さんに向かって、もう1度怒鳴った。

「あんたなんかいなければ、僕は…僕は幸せになれたんだ!」

お兄さんの顔が傷ついたものに変わって行ったのが、わかった。

私たち3人の間に沈黙が流れた。