み、ミチルさん…?

その人は、玉置常務とつきあっていた人あるいは好きだった人だったのだろうか?

「僕が欲しかったものは、全部あんたに奪われた!

愛情も美知留も、僕が心の底から欲しかったものは全部あんたに奪われた!

あんたは何もない僕を見て笑ってたんだ!

あんたのせいで僕の人生の大半は失った!

あんたのせいだ!」

ドガッ…!

自分の目の前で起こった光景が、信じられなかった。

玉置常務がお兄さんを殴ったのだ。

「――わっ…!」

殴られたお兄さんは、地面に倒れ込んだ。

玉置常務が人を殴った…?

あの紳士で、誰に対しても優しい玉置常務が…?

私は地面に尻もちをついた状態で、目の前の光景に戸惑うことしかできなかった。