「なあ、和歳。

もういい加減にわかってくれないか?

母さんはお前に会いたがっているんだ。

もういつ死ぬのかわからない状況なんだ。

だから、最後に母さんに顔を見せてやってくれないか?

お前が顔を見せてくれたら、母さんも…」

今にも玉置常務にすがりつきそうなお兄さんに、
「――今さら何だって言うんだよ…!」

地の底から聞こえてきそうな唸り声のような声に、私は驚いて玉置常務を見た。

声の主である玉置常務の顔は怒りで震えていた。

「た、玉置常務…」

震えた声で名前を呼んだ私に、
「今さら何だって言うんだよ!」

玉置常務はお兄さんに向かって怒鳴った後、お兄さんの胸倉をつかんだ。