「何であんたがここにいるんだ。

帰ったんじゃなかったのかよ」

そう言った玉置常務は敬語じゃなかった。

「武沢さんって言う秘書の人から聞いたんだ。

和歳が彼女――秘書を務めている矢萩さんの家でお世話になっているそうだから、住所を教えてもらったんだ」

お兄さんが言った。

「そんなことをしたんですか!?」

驚いて聞き返した私に、
「矢萩さん、彼はそう言う人なんです。

自分の目的を果たすためならば手段を選ばない、そう言う最低な人なんです」

玉置常務が言った。

敬語で話している玉置常務は、私がよく知っている玉置常務だった。

一体、どちらが本当の玉置常務なのだろうかと自分の上司なのに私は混乱しそうになった。