車は自宅に到着していた。

玉置常務と一緒に車を降りると、
「じゃあ、また明日もよろしくお願いします。

今日はそのまま帰っていいですよ」

彼は運転手に声をかけた。

「はい、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

あいさつが終わると、車が発車した。

車を見送ると、
「矢萩さん、今日も1日お疲れ様でした」

玉置常務が声をかけてきた。

「はい、玉置常務もお疲れ…」

「和歳!」

私のあいさつをさえぎるように、聞き覚えのある声が玉置常務の名前を呼んだ。

その声に視線を向けると、
「またかよ…」

玉置常務は忌々しそうに呟いた。

視線の先にいたのは、お兄さんだった。