その日は特に外へ出かける予定はなかった。

玉置常務の呼び出しがかかるまで秘書課で仕事をしていたら、
「矢萩さんって、玉置常務とつきあっているの?」

武沢さんに声をかけられた。

「えっ、はい?」

その質問に、私は驚いて聞き返した。

つきあってるって、私と玉置常務がですよね?

「そ、そんな訳ないじゃないですか!」

私は首を横に振って事実を否定した。

「密かに話題になっているわよ。

最近、玉置常務と矢萩さんが一緒に出社するようになったって」

「そ、そうなんですか…」

さすがに1週間も一緒に出社する日が続いていたら、単なる偶然で片付けられる訳ないか…。

だけど、同居生活を始めているなんて言える訳ないよね…。