ここまできた訳だから、帰るついでに顔を見せに行くか。

会社の前に足を踏み入れると、自動ドアが開いた。

中に入って、目の前にある受付に行くと、
「あの…矢萩と言うものですけれど、玉置さんと言う方はお見えでしょうか？」
と、受付嬢に声をかけた。

「玉置、ですか？

何かアポを取っていますか？」

不思議そうな顔で受付嬢が聞いてきたので、
「いや、アポと言うか…その、本社からあいさつへくるようにと言われたと言うか…」

私はどう答えていいのかよくわからなかった。

「少しだけお待ちいただいてもよろしいでしょうか？

すぐに玉置に確認を取ります」

受付嬢はそばに置いてあった電話機を手に取ると、電話をした。

少しだけ話をした後で、
「あ、そうでしたか。

わかりました。

はい、失礼しました」

そう言った後、受話器を置いた。