じれったい

「はい、そうです」

そう答えた私に、
「こんな大きな家に1人で寂しくないですか?

しかも母親が亡くなったのが中学2年生だったとなると、何かと大変だったんじゃ…」

玉置常務は驚いたと言うように言った。

「最初の1ヶ月間は寂しかったですけれど、すぐになれました。

お金の方も母が生命保険に入っていたおかげで保険金をもらえたことと事故を起こした相手の会社から多額の慰謝料をもらえたので、特には困りませんでした」

私は言い返した。

「お金のことはいいんですよ。

そう言うのは、後で何とでもなりますから。

親戚の方はいなかったんですか?

当時はまだ中学生だった矢萩さんを引き取ろうと言う話が出なかったんですか?」

その質問に、スプーンを持っている手が止まった。