先に沈黙を破ったのは、
「認めたくないと言う気持ちはわかりますよ。

僕も君と同じ、わからずやなところがありますから」

玉置常務からだった。

「亡くなった君のお母さんは、君にたくさんの愛情を注いでくれたことでしょうね。

君の育ちのよさから、僕はそう感じました。

その一方で、君は母親と同じ分の愛情あるいはそれ以上の愛情を注ぐ人を求めるようになった。

僕は君が母親思いのいい子であるのと同時に、母親に依存している悪い子だとそう感じました」

「――そうですか…」

「無意識だったんですか?」

「はい…」

玉置常務によって初めてつきつけられた事実に、私は首を縦に振ってうなずくことしかできなかった。

――悪い子じゃないんだけどね

私がそう言って振られた理由は、たった今玉置常務がつきつけてきた全部のことなのだと言うことに気づかされた。