待ち合わせ場所は有名ホテルの中にある喫茶店だった。

「間にあいましたね」

「ええ、はい…」

ホテルの前についた時には、私と玉置常務は荒い呼吸を繰り返していた。

「矢萩さん、大丈夫ですか?

少し顔が赤いですよ?」

そう言った玉置常務の手が私に向かって伸びてきたので、
「だ、大丈夫です…。

久しぶりに走ったので、ちょっと…」

私は2歩ほど後ろへ下がると答えた。

「そうですか、無理をさせてすみませんでした」

「い、いえ…」

そんな風に謝られてしまったら困ってしまう。

「さあ、行きましょうか」

「はい」

私が首を縦に振ってうなずいたことを確認すると、玉置常務はホテルのドアを押した。