「……てか、なんで、二足」
「……よく、盗まれるから予備を用意してるんです。体操着とか、靴とか……」
「……ふーん」
あたしは白馬の靴に足を入れた。
白馬は跪いて、あたしの靴紐を結ぶ。
王子様か。こいつは。
……ああ、王子様だっけ?
「どうぞ」
「……靴紐くらい結べるよ」
あたしはすこしむくれた。
あたしは立ち上がる。
当たり前だけど、靴はぶかぶか。
履き心地はお世辞にもいいと言えなかった。
「……なんかシンデレラの気分」
「いやいや、サイズ、全然合ってないじゃないですか。これじゃ、シンデレラじゃなくて意地悪な姉ですよ」
「うん。あたしはシンデレラの偽物だもん」
「偽物って……ほら」
白馬は無表情のまま、手を差し伸べた。
「歩きにくいでしょう。ほら、手もってください」
「……王子様、妥協するの?
あたし、シンデレラじゃないよ。偽物だよ」
「……何を言ってるんですか本当。
……ふむ」
白馬はすこし考えるような仕草をして、言った。
「僕は王子様の双子の弟。王子様の偽物です。
いいんです。もともと、僕は舞踏会であなたに一目惚れしたんです。
あなたこそ、偽物の王子様でもいいんですか?
……これでいいですか?」
「ぷっ」
あたしは思わず吹き出した。
「ふふ、あはは!
双子の弟って……趣味悪すぎでしょ!」
「なんですか。ご不満ですか」
「ううん! 全然!」
あたしは白馬の手を取った。