──昇降口にて



あたしは満先輩と別れて、靴箱を見て思わず黙り込んだ。



──そこにはあたしの靴はなかった。



代わりに、ゴミがたくさん詰め込まれていた。



「……」



多分、由麻の仕業なんだろう。



……あの靴は、あっちの世界から持ってきたものだ。



……なくなったら、ちょっと困る……。



お母さんに、買ってもらったやつだし……。



「……もういっそ、白馬に由麻のやったこと、バラしちゃおーかな……」



由麻は白馬のことが好きだから、多分それが一番の復讐法。



けど……。



由麻をこうしたのは、あたしだ。



あたしが、由麻をつくったんだから。



由麻に怒ったって、あたしが泣いたって、由麻はやめてくれないだろう。



彼女を作った、あたしが一番よく知ってる。



コイはいつも、こうされていたのだろうか。



あたしがこの世界に触らなくなって、この世界に戻ってくるまでも、ずっと────。



あたしを、恨むことなく、由麻を、恨むことなく。



健気で、優しくて、泣き虫で、ちょっぴり天然で。



あたしとは似てるけど、全然違うコイ。



……それが彼女の、設定だから。



でも、あたしは



「……ゴミ、捨てよ」



あたしは湧いてくる怒りを押さえつけるように、ゴミ箱へとゴミを投げつけた。



ゴミはゴミ箱には入らなくて、あたしはゴミ箱に近づいて、気づいた。



「あ、靴……」



ゴミに埋もれて、汚くなったあたしの靴。



「……はは」